エトロの布団カバー
呪われた エトロの布団カバー
ペイズリーのサーモンピンク
かなり気に入っている
だがこのカバーの出番がくると
男はなぜか
私と食い違う
布団カバーのせいにしたいのだ
今は
男と女が食い違う理由に
布団カバーってのも たまにはいいだろう
今は
そのカバーをはずす気もなく
ごろんと 横になり
白い壁に
走馬灯のように
去年の初夏を思い出す
白かった、牛乳パックの中でうずくまるように
白く 孤独だった
今は
孤独と 向き合えるようになりつつある
親友はいる
先輩も後輩も
悪友も
そして まりもも
でも
私以外の他者である彼らに
もたれないだけの孤独に
向かう力がついてきた
エトロの布団カバー
とりかえなくても平気
呪われたカバーでも
さてと、と、寅さんが革かばんをさげて旅立つように
私も 葛飾柴又をあとにはせず
深いエメラルド色の井戸の底から這い出す
底にはドクロが浮いている
これは本当の話
本当にあった怖い話
エトロの布団カバーがいつか
消耗する頃
湧き水の音をききながら
美味しいコーヒーを淹れる音をききながら
ギターの音色をききながら
くるみバターをパンに塗り
まぶしい初夏を見上げる
笑顔の自分がいるだろう


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